値洗い、追加証拠金とロスカット

値洗い

 一日の取引終了後、その時点での全建玉の約定値段とその日の最終約定値段となる「清算値段・帳入値段(チョウイレネダン)」との間に生じる価格差を計算します。これを「値洗い(ネアライ)」と呼びます。買い建玉(売り建玉)の場合は清算値段・帳入値段が約定値段を上回って(下回って)差益が出ている状況を「値洗い益(ネアライエキ)」、逆に買い建玉(売り建玉)の場合は清算値段・帳入値段が約定値段を下回って(上回って)差損が出ている状況を「値洗い損(ネアライゾン)」といいます。担保として委託証拠金を預託していることから、直ちに値洗い損になった分の金額を払う必要はありませんが、取次業者に預け入れている金額が取引に必要な証拠金を下回ると追加で証拠金を預託する必要がでてきます。一方で値洗い益になった場合も直ちに相当額を受け取ることはできません。反対売買により差金決済した時点で手数料が引かれ、残りの額を受け取ることができます。「評価益」・「評価損」も同様の意味で使われる場合があります。

追加証拠金(追証)

 証拠金取引では、取引金額に比べて少ない金額(証拠金)を担保にして取引することが可能ですが、値洗い損によって取引業者に預け入れている金額と値洗い損益を合計した「有効証拠金」が必要証拠金を満たさなくなると、追加で証拠金を求められることになります。これを「追加証拠金」、略して「追証(オイショウ)」といいます。

( 預入金額 + 値洗い損益 = 有効証拠金額 ) < 必要証拠金額

※ 実際には有効証拠金は先物取引・CFD・FXなど取引の違いで、金利受け払い・手数料などが加減される。

 例えば、金の呼値1グラム=8,000円の時、1枚新規買いを行いました。金の取引単位は1枚1,000グラムですので、1枚あたりの取引金額は8,000円×1,000倍=800万円となります。また取引業者には100万円を預け入れており、金1枚の証拠金は24万円です。この場合だと、預入金額100万円ー値洗い損益<必要証拠金額24万円 → 預入金額100万円ー必要証拠金額24万円<値洗い損益 となり、76万円を超える値洗い損が発生する段階で、追証が求められることになります。金がいくらまで下がれば追証が発生するかの計算は、預入金額と必要証拠金額の差額76万円が金呼値でいくらに相当するかを求めることでわかります(76万円÷倍率1000倍=760円)。つまり、金が8000円ー760円=7240円未満で一日の取引を終了すると、追加証拠金を求められることになります。

 追加証拠金を求められると、翌営業日(先物取引では概ね午前中だが時間は様々で取引業者により異なる)までの現金での入金が求められます。有効期限までに入金が行われない場合、取引業者により建玉の「強制決済」が行われます。なお、複数(枚・銘柄)の建玉保有時に追加証拠金を求められた場合、その後の相場が回復して有効証拠金が必要証拠金を上回ったとしても追加証拠金の求めを回避することはできません。

ロスカット

 追加証拠金は一日の取引終了後の状況で判定されますが、ロスカットは取引時間中に判定され強制決済される仕組みです。有効証拠金と必要証拠金の関係を見ることは追加証拠金の判定と同様で、有効証拠金が必要証拠金の一定水準以下になると強制決済されます。ロスカットの水準はおおむね50%~100%の範囲で顧客自身が設定する方法や特定の水準、例えば100%の水準で取引業者が設定する方法が採られています。ロスカットの制度は基本的に先物取引にはなく、CFD・FX・暗号資産証拠金取引で採用されています。