取引の基本ルール

 取引を行うために抑えておくべき基本ルールを先物取引中心に、その他CFD・FXについて補足する形で説明します。

取引単位・呼値

 先物取引での取引単位は「」で、最低取引単位である1枚あたりの銘柄の数量は各銘柄毎に決められています。一方、取引所の立会いで表示される値段を「約定値段(ヤクジョウネダン)」といいますが、この約定値段は1枚あたりの価格を示すものではなく、「呼値(ヨビネ)」という更に小さな単位の数量に対する価格です(呼値は最小変動幅(刻み値)のことをいう場合もあります)。例えば、金では1グラム8,586円や、原油では1キロリットル98,500円とニュースなどで取り上げられたりしますが、これが呼値です。取引単位(1枚当たりの数量)を表示単位(約定値段の対象となる数量単位、呼値の単位)で割ったものを「倍率」といいます。約定値段に倍率を掛けることによって実際の取引総額が計算できます。

 なお、ここでいう倍率はレバレッジ倍率とは異なります。あくまで表示単位に対して1枚あたりの取引単位「枚」が何倍になるかをという倍率で、レバレッジ倍率は(一枚あたりの)取引総額を(1枚あたりの)証拠金額で割った値となります。

 「金」の取引単位(1枚)は1,000グラム、取引所の立会での呼値の単位は1グラム、倍率は1,000グラム÷1グラム=1,000倍です。下記「金」の相場表(一部を取り出したもの)をご覧下さい。

限月始値高値安値現在値
12月限8,654円8,705円8,634円8,699円

 相場表で示される価格は、金の呼値の単位が1グラムであることから、金1グラムは8,699円です。金を8,699円で1枚買う場合、建玉を行うのに担保として必要となる証拠金はこの時24万円ですが、1枚は1,000gであり、従って倍率は1,000倍であることから、実際の取引総額は8,699円×1,000倍=869万9,000円となります。ここで、金の約定値段が8,699円から8,709円へと10円上昇した場合、(8,709円-8,699円)×1,000倍=1万円の変動(買いであれば利益、売りでれば損失)となるわけです。ちなみにレバレッジ倍率は、869万9,000円÷24万円≒36倍となります。

 先物取引以外の証拠金取引、CFDや暗号資産証拠金取引では「枚」ではなく主に「ロット」という単位での取引となります。1ロットは呼値の単位での取引となり、例えば金1グラム8,000円という呼値であれば、1ロットは1グラムの取引となります。ロットは整数だけでなく、0.1ロットや0.5ロット単位といった1ロット未満での取引も銘柄によっては行われています。FXでは1,000通貨や100通貨というように「通貨」単位での取引となります。米ドル円を売買する場合、100通貨の場合100米ドルを売買するということになります。

取引限月

 先物取引は、将来の一定時期に受け渡しを行う約束の取引ですから、取引の期限が定められています。取引の期限となる月を「限月(ゲンゲツ)」と言い、例えば取引の期限となる月が2024年2月であれば、それを2024年2月限(ガツギリ)と呼びます。取引の期限となる月「限月」はあくまでも受け渡しを履行するという取引の期限となる月であり、受渡しを行わず反対売買(買いであれば売り手仕舞い、売りであれば買い手仕舞い)による差金決済で取引を終了するためには別途定められた最終立会日である「納会日(ノウカイビ)」までに反対売買を行う必要があります。納会日は、銘柄によって異なります。

 日本の多くの商品では6つの限月で取引されており(6限月制)、最も取引の期限の早い「当限(トウギリ)」が納会日を向かえ、その限月の取引が終了すると5限月となりますが、翌営業日に新しい限月が取引を開始して6限月に戻ります。この限月の最初の取引を「新甫発会(シンポハッカイ)」、その限月は最も取引の期限が遅いことから当限に反して「先限(サキギリ)」と呼びます。例えば「1月限、2月限、3月限、4月限、5月限、6月限」という限月があり、1月限が納会を向かえると、翌営業日に7月限が新甫発会を迎え「2月限、3月限、4月限、5月限、6月限、7月限」で取引が継続されます。

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 先物取引外の証拠金取引、CFD・FX・暗号資産証拠金取引には取引限月はありません。CFDの一部には異なる限月を対象としたCFDの取引が行われておりますが、それらは(証拠金の計算において)別々のCFDとして取り扱われます。

取引時間

 先物取引の立会いは、土日祝日、及び年末年始を除いて毎日行われています。一部を除く銘柄で午前8時45分から午後3時15分までの「日中立会」と、午後4時半から翌日午前6時までの「ナイト・セッション」による取引が行われています。

 日中立会では、午前8時から午前8時44分まで「プレ・オープニング」として注文を取引所で受け付け、午前8時44分から45までの1分間は「ノンキャンセル・ピリオド」として注文の訂正・取り消しができない時間(新規注文は受け付けられる)、午前8時45分に「オープニング・オークション」として板寄せ方式により一本値にて売り注文と買い注文の数量(枚数)が一致する価格で成立、そこから午後3時10分まで「ザラバ」として通常の株式市場のようにザラバ方式にて取引、午後3時10分に「プレ・クロージング」として注文のみ受け付け(取引の約定・マッチングは行われない)、「クロージング・オークション」として「オープニング・オークション」と同じ板寄せ方式による一本値での価格成立という区分け・流れで取引が進行してきます。

 ナイト・セッションでも、日中立会と同様の流れで進行していきます。ゴム先物、電力先物、日経平均VI先物、オプション取引などでは日中立会を含めて取引時間が異なりますので、ナイト・セッションの詳細など、JPX日本取引所グループの「立会時間」をご覧ください。

 なお、1日の営業日の区分けは、「ナイト・セッション」と「日中立会」をワンセットとして考えます。例えば、2022年6月28日午後4時半から始まる「ナイト・セッション」が2022年6月29日の営業日の始まりとなり、「日中立会」の午後3時15分で2022年6月29日の営業日が終わるということになります。

 先物取引以外の証拠金取引、取引所FX・店頭FXは、いずれも土日以外、日本の祝日を含めてほぼ24時間取引が可能です。取引所CFD・店頭CFDは、CFDの対象となっている原資産によって取引時間が異なります。取引量の多いメジャーな銘柄を原資産としたCFDであれば、ほぼ24時間取引が可能ですが、マイナ―な銘柄を原資産としたCFDでは限られた時間のみとなる場合があります。原資産が取引されている国の祝日にあたり取引ができない場合もあるため、事前に確認するなど注意が必要です。暗号資産証拠金取引では、土日祝日を含めてほぼ24時間取引が可能です。

制限値幅

 「制限値幅」は、1日における値動きの幅を制限し、急激な価格変動による混乱を防止、冷静な判断を取り戻す時間を設けるためにあります。制限値幅は各商品ごとにそれぞれ決められており、制限値幅の上限まで価格が上昇すると「サーキット・ブレーカー」が発動され、10分以上取引が中断された後、通常設定された制限値幅が(制限値幅に達した方向のみ)拡大されて再開されます。通常設定される制限値幅は、日経225先物、金先物などの大阪取引所銘柄では5~10%、ドバイ原油先物、LNG先物などの東京商品取引所銘柄では30%に設定されています。詳しくはJPX日本取引所グループの「制限値幅、サーキット・ブレーカー制度」をご覧ください。

 先物取引以外の証拠金取引、取引所CFDでは一部の銘柄で制限値幅の制度が導入されています。店頭CFDも含めたCFDではCFDの対象となる原資産が上場されている取引所により制限値幅が導入されている場合、当該CFDにおいても取引が停止されることがあります。取引所FX・店頭FXや暗号資産証拠金取引には制限値幅はありません。