先物取引・CFD・FXの概要

先物取引とは?

 先物取引とは、商品においては「将来の一定時期に商品を受け渡しすることを約束して、その価格を現時点で決めておく取引」です。主たる先物取引の機能として、「リスク・ヘッジ機能」、「資産運用機能」、「価格形成機能」があります。

リスク・ヘッジ機能

 例えば、輸入業者が商品を海外から輸入する場合、商品を海外から買い付けて国内で販売する間にはタイムラグが生じます。その間に商品の価格が下落をしてしまうと、海外で安く買い付けてもそれ以上に下落し国内で販売する時点では損失がでる可能性があります。海外で買い付けをすると同時に国内の先物市場で売り契約の取引を行うことで、海外から輸入して国内で販売する取引で損失が出ても、先物市場で利益がでて損失がカバーされるため、値下がりリスクを回避できます。これが「売りヘッジ」です。反対に、販売業者で商品の仕入れ値が変動にさらされるのを回避するために先物市場で買い契約の取引を行うことで、仮に価格上昇で仕入れ値コストが上昇し利益が縮小しても、先物市場で利益がでて損失がカバーされるため、値上がりリスクを回避できます。これが「買いヘッジ」です。このように業者が抱える商品の価格変動リスクを回避(ヘッジ)する機能を商品先物取引は備えています。

 これは商品においてだけでなく、株価指数においても例えば機関投資家や証券会社などが保有する株式の損失を避けるために、(保有する株式と同じものでなくても連動性の高い株価指数先物があることを前提に)株価指数先物を売りヘッジすることで、下落リスクを回避することができます。

資産運用機能

 先物取引では、将来の一定時期に必ず受け渡しを行わなければならないわけではなく、その約束の期日が来る前に反対の売買契約を結ぶことで、支払う代金と受け取る代金の差額を清算し、取引を終了することができます。これを「差金決済(サキンケッサイ)」と言います。更に、商品の受け渡しの約束は現時点で行われますが、商品の受け渡し自体は将来の一定時期に行われるため、約束をする時点での商品の代金(買い方)、もしくは商品の現物(売り方)は必要ありません。もちろん現物が必要ないことから、価格が下がると思えば現物を持たなくても売り契約を結ぶ(空売り)こともできます。

 商品の代金や商品の現物の代わりとなる取引の担保が必要になります。これを「証拠金(ショウコキン)」といいます。担保は当該商品の過去の値動きの大きさによって変動しますが、商品の総代金の概ね3~10%となっており、言い変えれば資金の10倍から30倍超の取引が可能となります。このように投下資金でその数倍の取引が行える効果を「レバレッジ効果」と言い、レバレッジ効果を持つ先物取引は資金効率の高さから資産運用機能の役割も果たします。

価格形成機能

 先物取引は、当業者自身が取引所の会員として取引に参加したり、取引員と呼ばれる取次業者を通じて一般投資家などが誰でも自由に取引に参加できます。各々の参加者が有する膨大な情報に基づき形成される価格は、参加者全ての意向が反映された公正な価格となります。更に、定期的、継続的に取引が行われた価格は、新聞などを通じて広く公表されることから、関連業界などの指標として活用されています。

取引所・店頭市場と取扱い銘柄

 国内の先物取引は、現在取引所の合併によりJPX日本取引所グループ傘下の大阪取引所(OSE)、東京商品取引所(TOCOM)と大阪の堂島取引所(ODEX)によって取引が行われています。

 先物取引以外にも同様の機能を有するものとして、「CFD」(商品や株価指数を対象とした差金決済取引)や「FX」(外国為替証拠金取引)があります。CFD、FXにはそれぞれ取引所と店頭という区分けがあり、取引所CFD・取引所FXはそれぞれ「くりっく株365」・「くりっく365」という名称で東京金融取引所により運営されています。店頭CFD・店頭FXは取引所に拠らず各取引業者独自でサービスを提供され、取引業者が直接の取引相手(これを「相対取引(アイタイトリヒキ)」)となるものです。本来FXはCFDの一種ですが、市場の形成過程でFXでの取引が先行して活発化したことから、一般的にCFDをFX以外の差金決済取引として分けて使われています。暗号資産証拠金取引は、「暗号資産CFD」・「暗号資産FX」などとも呼ばれ、現在国内においては店頭市場での取引のみとなっています。

 取引所による取引では、取引の相手方は取引所に注文を出す他の取引参加者となります。この時、取引参加者の注文は「(イタ)」と呼ばれる現在の注文状況を確認することができ、それを参考に取引を行うことができます。ただし、取引所CFD「くりっく株365」・取引所FX「くりっく365」では取引所取引ではありますが、取引の直接の相手方は東京金融取引所に選ばれた「マーケット・メーカー」となります。マーケット・メーカーは「売り気配」・「買い気配」を提示し、買い注文であれば売り気配に、売り注文であれば買い気配の価格で注文を成立させることになります。売り気配は、「ask(アスク)」・「offer(オファー)」、買い気配は「bid(ビッド)」・「pay(ペイ)」などと呼ばれることもあります。

 店頭市場による取引では、先ほども述べた通り取引の直接の相手方は取引業者となります。注文は取引所CFD・取引所FXと同様に、提示された売り気配・買い気配で成立することになります。

取引種別取引所主要な取扱い銘柄取引の相手方
株価指数先物取引 大阪取引所 日経225先物、TOPIX先物、東証マザーズ指数先物、東証REIT指数先物 他の取引参加者
商品先物取引 金先物、銀先物、白金先物、ゴム先物、とうもろこし先物
東京商品取引所 ドバイ原油先物、ガソリン先物、灯油先物、LNG先物、電力先物
堂島取引所 各種コメ先物
取引所CFD 東京金融取引所 日経225、NYダウ、独DAX、金、原油 マーケット・メーカー
取引所FX ドル円、ユーロ円、ユーロドル、英ポンド円、豪ドル円
店頭CFD 各取引業者 株価指数、商品、個別株など幅広い金融商品(取引業者により異なる) 各取引業者
店頭FX 幅広い通貨ペア(取引業者により異なる)
暗号資産証拠金取引 ビットコイン、イーサリアム